
「効率的フロンティア」とは、ポートフォリオにおける資産配分の中で、投資家にとって最も有利な選択肢の集合です。
投資をされる方は、ポートフォリオをどうしよう?というお悩みを持つ方も多いかと思います。
そこで今回は
- ポートフォリオ効果とは
- 相関関数とは
- 効率的フロンティアとは
- 効用無差別曲線とは
- 資本市場曲線とは
- CAPM(キャップエム)とは
など、ポートフォリオを評価するための事項を纏めました。
ポートフォリオについて気になっている、学んでみたいという方は是非この記事を読んでください。
※当ブログは投資を勧めるものではなく、あくまで一般的な事項を説明をするためのものです。
ポートフォリオ効果とは?

ポートフォリオのリスク(変動)は、単純に個別の証券のばらつきを足し合わせるわけではありません。
例えば、
証券Aの収益率が高く、B証券の収益率が悪い場合、証券Aと証券Bを組み合わせたポートフォリオの収益は平均化され、リスク(変動)は小さくなります。
このように、値動きの異なるものを組み合わせることで、ポートフォリオ全体としてのブレが相殺されてリスクが軽減することをポートフォリオ効果といいます。
ポートフォリオ運用においては、一般に、同じ資産クラス(国内株式、国内債券、外国株式。外国債券など)の中での個別銘柄選択よりも、その資産をどのくらい組み入れるかといった資産配分比率(アセットアロケーション)のほうが運用効果を決定する重要な要素とされています。
相関関数とは?
ポートフォリオ効果の程度には、組み入れられる証券同士の動き方が似ているかどうかという相関関係が大きく影響します。
相関関係は相関係数で表され、証券同士の関係性の強さを表す尺度として、-1から1までの範囲の数値をとります。複数の証券同士の相関係数が小さいほど、ポートフォリオ効果(リスク軽減)は最大なり、-1で最大になります。
- 相関係数⁼1 完全に同一方向に動く(ポートフォリオ効果はない)
- 相関係数⁼0 動きは全く関係をもたない
- 相関係数⁼-1 全く逆方向に動く
相関係数を導く数式は以下の通り。
相関係数=(証券Aと証券Bの共分散)/(証券Aの標準偏差×証券Bの標準偏差)
ここで、共分散とは2 種類のデータの関係を示す指標です
共分散AB=期待値{(証券A-[証券Aの期待収益率])(証券B-[証券Bの期待収益率])}
で表されます。
効率的フロンティアとは?
下表のように経済状態によって収益率が変動する証券Aと証券Bへの投資を仮定します。
表 証券Aと証券Bの予想投資収益率
経済状態 | 生起確率 | 予想投資収益率 | |
証券A | 証券B | ||
好景気 | 20% | 10% | ▲1% |
平常時 | 60% | 8% | 3% |
不景気 | 20% | ▲3% | 5% |
このポートフォリオにおいて、証券Aと証券Bの組み入れ比率を変えて、機体収益率とリスクを算出した表は、次の通り。
表 組入割合ごとの期待収益率
A証券 | B証券 | 期待収益率 | 標準偏差 | |
① | 0% | 100% | 2.60% | 1.96% |
② | 10% | 90% | 2.96% | 1.46% |
③ | 20% | 80% | 3.32% | 1.09% |
④ | 30% | 70% | 3.68% | 1.01% |
⑤ | 40% | 60% | 4.04% | 1.28% |
⑥ | 50% | 50% | 4.40% | 1.74% |
⑦ | 60% | 40% | 4.76% | 2.29% |
⑧ | 70% | 30% | 5.12% | 2.86% |
⑨ | 80% | 20% | 5.48% | 3.45% |
⑩ | 90% | 10% | 5.84% | 4.06% |
⑪ | 100% | 0% | 6.20% | 4.66% |
縦軸に期待収益率(μ)横軸に標準偏差(σ)をとってグラフを書くと、左側に凸の放物線を描くことができます。

図 証券Aと証券Bの期待収益率と標準偏差図 証券Aと証券Bの期待収益率と標準偏差
ここからわかることは、偏差が1%~2%の間で、同じリスクをとる部分があります。
同じリスクをとるならリターンの大きい組み合わせを選択する方が有利ですよね。
つまり、点線から上側の部分が同リスクで高いリターンが期待できる点の集合体となります。
証券Aと証券Bに投資する際に、適切な組み合わせの集合体、つまりμが約3.5以上の部分を効率的フロンティアと言います。
言い換えると、投資をするならこの領域での割合ですると良い、ということです。
効用無差別曲線とは?
ここまでは、投資する証券のリスクとリターンの関係を説明してきましたが、今度は実際にポートフォリオを構成する投資家の主観的な観点からこれらの関係をみていきます。
ここでは投資家を3つのタイプに分類します。
- リスク回避型 :リスク回避を重視する投資家で、同じリスクならリターンの高いポートフォリオを選択する
- リスク中立型 :リターンのみを重視する投資家
- リスク愛好家 :リスクが高いほど積極的で、同じリターンならリスク高いポートフォリオを選択する投資家
1. リスク回避型

2. リスク中立型

3. リスク愛好家

ただし、ポートフォリオ理論での投資家は「リスク回避型」であることが前提です。
投資家は、期待収益率(期待リターン)と標準偏差(リスク)の2つの要素を統合的に勘案して、満足度の高い投資方法を選択します。この投資家の満足度のことを効用といい、投資家が等しい満足度を感じるリスクとリターンの組み合わせを効用無差別曲線といいます。
投資家のタイプと効用無差別曲線の関係は次の通りです。
- 同一の効用無差別曲線上の点は、それぞれのタイプの投資家にとって等しい満足度となっている
- いずれも上方に位置する線の方が投資家に満足度は高くなる
3証券以上のポートフォリオと効率的フロンティア

図 3証券A・B・Cのポートフォリオ
3証券以上を組み合わせた場合は、2証券の組み合わせで作られた線に、新たな点を組み合わせた投資機会が表され、こうした組み合わせは「面」を構成します。
3証券A・B・Cの組み入れ比率を様々に変化させた場合のポートフォリオは図のようになります。
投資家の満足度が最も高くなる、つまり投資効率が良いのは朱線の効率的フロンティア部分です。
効率的フロンティア上のポートフォリオを効率的ポートフォリオといいます。
無リスク資産を含む効率的フロンティア

図 3証券A・B・Cと無リスク資産のポートフォリオ
投資家の実際の行動を考えると、リスクの高い証券ばかりに投資をするのではないく、普通預金・国債などの無リスク資産と呼ばれる、リスク(変動)がゼロの資産も投資の対象になります。
無リスク資産を組み入れた場合のポートフォリオはこの図のようになります。
無リスク資産はリスクがゼロ(σ=0)なので、縦軸上の点となります。
つまり、無リスク資産を含む新たな投資集合は、Zとポートフォリオ内のどこかの点を結んだ直線上にあります。
無リスク資産をZとして、Zから証券ABCの効率的フロンティアへの接点をX、証券ABC内の任意の点をYとします。
2点X,Zを結んだ直線と2点Y,Zを結んだ直線を比較した場合、投資家はリターンの高いポートフォリオを選択するので、2点X,Zを結んだ直線のほうがポートフォリオの効用が高いといます。
投資家の効用が最大になるのは、無リスク資産を含まなかったときの効用的フロンティアと、点Zを通る直線が接する場合である。この直線は証券ABCのXにおける割合で保持し、無リスク資産Zを加えたポートフォリオとなります。
接点Xにおけるポートフォリオで投資家の満足度は最大になります。これを最適ポートフォリオといいます。
また、この接点Xにおけるリスク資産のみのポートフォリオを接点ポートフォリオという
このように、リスク資産の期待収益率および標準偏差、ならびに無リスク資産の期待収益率を把握することができれば、最も効率的なポートフォリオの作り方がわかる!ということです。
資本市場線とは?

資本市場線とは、無リスク資産を含む効率的フロンティアを市場に拡張して解釈したものです。
これまで、証券A・証券Bなど特定の証券について考えてきた理論をある市場の全銘柄に置き換えて考えてみます。
(前提条件)
- 青字部分の相関曲線は、市場のすべての証券のポートフォリオとする。
- 市場やすべての投資家は、効率的であるとして、全員が無リスク資産からこの相関曲線への接点Tのポートフォリオにて証券を保有している。
無リスク資産から接点Tへ引かれた朱色の直線を「資本市場線」と呼ばれます。
資本市場線では、ハイリスクならハイリターン、ローリスクならローリターンが成立します(トレードオフの関係)。
ポートフォリオの期待収益率は、算式で表すと次のようになります。
- ポートフォリオの期待収益率=無リスク資産利子率+(市場全体の期待収益率ー無リスク資産利子率)/市場全体の標準偏差×ポートフォリオの標準偏差
CAPM(キャップエム)(資本資産評価モデル)とは?

前述の通り、資本市場線上においては、ハイリスクならハイリターン、ローリスクならローリターンというトレードオフの関係が成立するとされています。
が、実際の個別証券では、必ずしもその関係が成立するとは限りません。
そこで、リスク指標として標準偏差ではなく、βを採用し、リスクとリターンの関係性をみていく資本資産評価モデル(CAPM:capital asset pricing model(キャップエム))が考え出されました。
βとは、市場全体が1%動いたときに、その証券が何%変動するかを表した数値。市場全体のリスクに対する感応度のことです。
βの値は次のように求めます。
- β=個別資産と市場の共分散/市場の分散
ここで、個別資産と市場の共分散とは、「個別資産 の偏差× 市場の偏差」の平均のことです。
市場の分散とは(市場の偏差)の2乗の平均 のことです。
したがって、以下の関係が成り立ちます。
- β=1:個別資産の偏差=市場の偏差:つまり個別資産は市場全体と同じ動きをする
- β>1:個別資産の偏差>市場の偏差:市場全体よりも大きい値動きをする
- β<1:個別資産の偏差<市場の偏差:市場全体よりも小さい値動きをする
例えば、ある証券のβ値が1.1の場合、市場全体が10%上昇するとその証券は11%上昇し、市場全体が10%下落すると11%下落することを意味します。
したがって、リスク指標とも捉えられ、市場全体が上昇すると判断する場合は、β値の高い銘柄に投資するなど、銘柄選択に用いられます。
なお、資本資産評価モデルにおける個別資産の期待収益率は、次の算式で表されます。
- 個別資産の期待収益率=無リスク資産利子率+(市場の期待収益率ー無リスク資産利子率)×β
【資本資産評価モデルの基本事項】
- 標準偏差の代わりにβを横軸にとる
- 無リスク資産はβ⁼0であり、市場ポートフォリオは常にβ=1である
- 無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ直線を証券市場線という
例題 資本評価モデル
表 ポートフォリオA,Bと市場ポートフォリオ
ポートフォリオA | ポートフォリオB |
市場ポートフォリオ |
|
リターン | 12% | 7% | 8% |
β | 1.2 | 0.8 | 1.0 |
表のポートフォリオA,Bについて市場ポートフォリオとの関係を整理するために、リターン(μ)とβのグラフを作成します。

図 ポートフォリオA,Bと市場ポートフォリオ
市場ポートフォリオのβは当然1です。
βが1より大きいポートフォリオAは、市場ポートフォリオよりも右方向に位置するβが1より小さいポートフォリオBは、市場ポートフォリオよりも左方向に位置します
青で引いた線は、無リスク資産と市場ポートフォリオを結ぶ直線で証券市場と呼ばれます。
資本市場線は、無リスク資産を含めた効率的フロンティアです。
証券市場線の上方に位置するか下方に位置するか、ポートフォリオの収益率によって決まります。
証券市場線の上側に存在するポートフォリオA,Bは、市場から過小評価されているといえます。
つまり、ポートフォリオA,Bはいずれも良いポートフォリオであると言えます。
このように、市場ポートフォリオを例えば、TOPIXなどと仮定することで、自分のポートフォリオを評価することができます。
日経新聞では各証券のβ値をランキングしています。
まとめ

で今回「効率的フロンティア」はを中心に
- ポートフォリオ効果とは
- 相関関数とは
- 効率的フロンティアとは
- 効用無差別曲線とは
- 資本市場曲線とは
- CAPM(キャップエム)とは
など、ポートフォリオを評価するための事項について学びました。
投資をする際に、ポートフォリオをどうしよう?と悩んだ時は、是非またこの記事を参考にして頂ければ嬉しいです。